Hole In The Wall

カリフォルニア州サンノゼ在のソフトウェアエンジニア。

産婦人科の倫理。

スタンフォードを始め、大学病院だと"teaching hospital"といって研修目的でインターンが診察に立ち会うことがある。んで、産婦人科のお話。

産婦人科の手術、全身麻酔中、研修医に"pelvic exam"(骨盤内診察)を研修目的で試させるんだそう。被術者はもちろんその事実は知らず、これは倫理的に問題なんじゃないの、という話。被術者がたくさんサインする同意書の中に、

I acknowledge that medical students may be part of my treatment team. 

 というのがあり、これに同意することで"treatment"の一環と見做されるんだそう。

これに疑問を持ったあるお医者さん、今まで当然とされてきて(というかcan of wormsだった)、且つ誰も調査しなかったこの慣習に注目して調査プロジェクト実施。骨盤手術(予定)者102人にサーベイを実施した結果、

The vast majority, 81% of them, had no idea that a med student might do a pelvic exam on them while they were asleep. And most said, yeah, they wanted to be asked.

うん、これはわかる。81%が研修医による骨盤内診察が行われてることを知らなかったし、やるなら通知してほしい。という結果。が、しかし驚くのは、

53% of women said they actually wouldn't mind being examined by a student while unconscious as long as someone asked them for permission beforehand.

53%が事前に許可を求められたら、術中に研修医が診察してもOK、という結果。

この研究を公開したから産婦人科界隈は大騒ぎ。カナダはこれを尊重してOB/GYNの見解としてこれを支持、ガイドラインを変更したけれど、アメリカのOB/GYNはこの研究を非難。カリフォルニアを含む5つの州でこの"pelvic exam"は違法だし、現在はほとんど実施されてない、という病院の見解。 ただし研修医側の意見は真逆、現在も普通に実施。このへんは闇の部分。特に"pelvic exam"肯定側の(主に男性医)よくある発言、

Well, what you don't know can't hurt you. (OMG!) 

うーむ。

ちなみにこの倫理問題、最近のメディカルスクール授業の材料として頻繁に議論されているらしい。医者的に「口を診察」するのと何処が違うの?という意見もあるだろうけど、やっぱり違うと思う。